【書評】不安の解体 ぼくらの哲学2 青山繁晴
自分はなぜ生まれてきて、なぜ生きているのか。そして、なぜ死ぬのか。
あなたは考えたことがあるだろうか。「生きる理由」「生きる目的」を。
それがわからないと、小さな「自分」の殻に閉じ籠ってしまい、自分のことだけを考える小さな大人になってしまうだろう。
本書には、あなたが「生きる理由」を考えるための「ヒント」が書かれている。あなたが生きるために必要な「哲学」が書かれている。
著者は参議院議員の青山繁晴氏。
日本初の独立系シンクタンク「独立総合研究所」の社長兼主席研究員を経て、2016年に参議院に当選した。本業は危機管理の専門家で作家。多数のベストセラーがある。
本書は、「ぼくらの祖国」「ぼくらの真実」「ぼくらの哲学」の三部作に続く流れの最新刊だ。副題で「ぼくらの哲学2」とある通り、先に出た「ぼくらの哲学」の続編でもある。
どの本も、自分の頭で考えるための問題提起に溢れた良書ばかりだが、この最新刊も期待以上のものだった。
<目次>
源流の章 ソノ不安ヲ解体スル
一の章 希望の春は潰えず
二の章 わたしたちはもはや裸足ではない
三の章 あぁ脱藩
四の章 一人の中の悪魔と天使
五の章 動乱の夏をまっすぐ生きよう
六の章 国会議員とは何者か
七の章 では次に、国会とは何か
八の章 知られざる日々
九の章 初陣は朗らかに
十の章 打ち破って、護る
十一の章 社会には治すべき「癖」がある
十二の章 暗黒国会を生きる
十三の章 危機はいつも新しい仮面を付ける
十四の章 何のために生きるかを考える、それが日本の改憲だ
十五の章 日本の暗黒を知る
十六の章 暗黒を超ゆるは明日ならず
大海の章 不安ノ解体ハ一日ニシテ成ラズ
本書を開くと「筆者から読者へ」と書かれたメッセージに続いて、いわゆる「はじめに」の部分が約30ページも書かれている。「源流の章」と題された序章だが、常識ではあり得ない分量に驚いた。
ここには、本書を貫く重要な問題提起がなされている。すなわち「不安の解体」とはどういうことか、だ。なぜ筆者がこれほどまでに魂を削って日々活動しているのか、私たち読書に何を伝えたいのか、がよくわかる。私もしっかり考えてみたい。
そして「源流」から始まった問題提起が、16本の章を経て、「大海」まで続いている。それはまるで、山から滲み出た水滴が集まって大きな川になり、海にたどり着く様を表現しているようだ。海にたどりついた水滴は、やがて蒸発して雲に変わり、雨となって山に降り注ぎ、再び水滴となって川に流れる。永遠のサイクルだ。著者の問題提起は、この永遠に続くサイクルの最初の最初の一滴かも知れない。
なるほどそれは簡単には解決しない問題だろう。時間と根気が必要だ。しかし、源流はいつか必ず海にたどり着くはず。諦めたくない。
あなたなら、この著者からの問題提起をどう考えるだろうか?
著者は言う
何のために社会にいるのか、何のために働くのか、何のために子育てをするのか、何のために学ぶのか。それを知らずして生きることほど、底知れぬ不安の苦しみに直結することはない。子が親をあやめ、親が子をあやめる祖国と成り果てたのは、ここに根っこがある。
人は、何のために生きるのかを知らないが故に、不安を抱えてしまうのだ。
本書を読んで、あなたも著者と一緒に考えてみて欲しい。
そして個人的にもっとも考えさせられたのが、東日本大震災の時、破壊された福島の原発で作業を進める技術者たちの姿だ。東京の偉い人たちの態度とはまるで違う「技術者の良心」が描かれている。
著者は、破壊された福島の原発に世界で最初に入った危機管理の専門家だ。その著者の現場体験を基にしているので、迫力が違う。
日本を支えているのは、こうして現場で働く技術者たちなのだ。私もエンジニアの端くれとして鑑としたい。
あなたも、この本を読んで生きる理由を見つけ、これからの人生を、力強くを歩んでいってほしい。
【関連記事】 他の書評はこちら
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。